写真:吉田亮人 文:矢萩多聞
photo by Akihito Yoshida,
text byTamon Yahagi,
Ambooks
はたらくって、なんだろう

朝から晩までひとりの人にはりついて、その仕事や暮らしぶりをつぶさに見つめる写真絵本「はたらく」シリーズ。配本第一弾は「本屋」と「中華料理店」の一日。

本文はリソグラフ印刷機によるスミ+金インク2色刷り。製本はミシン糸とじ中綴じ。シンプルだけど、どこかなつかしい絵本をお届けします。

news
2021. 9. 1  『はたらく』第二刷が完成しました

はたらく 本屋

大阪にある本屋「長谷川書店」ではたらく、みのるさんの一日におともします。

朝、お店のなかでは、とどいたばかりの本がぎっしりつまった箱がいったりきたり。いそげいそげ、もうすぐ10時。お客さんがやってくる――。

子どもからお年寄りまで、町の人たちがゆき交う縁側のような本屋で、くりかえされるありふれた奇跡。(2刷)

はたらく 中華料理店

宮崎の「喜楽園」は夫婦ふたりで切り盛りするちいさな中華料理店。じつはここ、写真家吉田亮人のご両親が営むお店なんです。

ごとんがこん、ちゅう房に中華なべをふるう音がひびきます。つくって、はこんで、お皿をさげて、あらって……あれ、また注文がはいったようです。

「日常のごちそう」として地元の人に愛され、40年間何万皿という料理をつくってきたお店のとある一日。(2刷)

シリーズのことば

「将来、なにになりたい?」

と大人は子どもになにげなく質問します。

返答はさまざま、時代のうつりかわりとともに人気の職業があるようです。

しかし、サッカー選手でも花屋でも、まったくおなじようにはたらき、暮らしている人はひとりもいません。

ぼくらの生活は、だれかの仕事のおかげで成り立っているはずなのに、彼らが日々どんなことを思い、喜び、悲しみ、暮らしているのかあまり知りません。

ふと足をとめて星空を見上げるように、目の前を通り過ぎるいろんな「はたらく」を見つめたい。

大人も子どももおなじ地平に立って、はたらくってなんだろう、と考えるきっかけになったらいいな。

そんな思いのもと、写真絵本「はたらく」シリーズをつくりました。

この本のちょっとした特徴

リソグラフ印刷
世界中のリトルプレスで人気の、孔版印刷「リソグラフ」で印刷しています。ザラザラとした粒子、独特の風合いが、吉田亮人の写真と相まって、なつかしい町の姿を浮かび上がらせます。

ミシン糸綴じ
手縫いで製本した初版につづき、二刷からはミシン糸とじで製本しています。一冊一冊手作業で綴じた本はやさしいひらき。本によって糸とじの色も異なります。どんな色あわせで届くかはお楽しみ。

ナンバリング
二刷は各250部。出荷前に一冊ずつ装丁家みずからの手で通し番号をスタンプ。すこし手間はかかるけれど、あなただけの一冊として大切にしてもらえるように、願いをこめて送り出しています。

印刷・製本:Hand Saw Press Kyoto

作者について

〈写真〉
吉田亮人 よしだ・あきひと

写真家。

1980年宮崎県生まれ。京都市在住。滋賀大学教育学部卒業後、タイで日本語教師として1年間勤務。帰国後小学校教員として6年間勤務。2010年より写真家として活動開始。広告や雑誌を中心に活動しながら、「働く人」や「生と死」をテーマに作品制作を行い国内外で高く評価される。

写真集に『Brick Yard』『Tannery』(以上、私家版)、『THE ABSENCE OF TWO』(青幻舎・Editions Xavier Barral)などがある。

2021年、写真家としての10年間の活動を綴った書籍『しゃにむに写真家』(亜紀書房)が刊行。日経ナショナルジオグラフィック写真賞2015・ピープル部門最優秀賞など受賞多数。

〈文〉
矢萩多聞 やはぎ・たもん

画家・装丁家。

1980年横浜生まれ。9歳から毎年インド・ネパールを旅する。中学1年で学校を辞め、ペンによる細密画を描きはじめる。南インドと日本を半年ごとに往復し暮らし、銀座、横浜などで個展を開催。2002年から本をデザインする仕事をはじめ、これまでに600冊を超える本をてがける。

2012年、京都に移住。2016年、Ambooksという屋号でリトルプレスの出版を開始。現在、本づくりと画業、ワークショップなど多岐に渡って活動中。

著書に『偶然の装丁家』(晶文社)、『たもんのインドだもん』(ミシマ社)、『本の縁側』(春風社)、共著に『タラブックス』(玄光社)、『本を贈る』(三輪舎)などがある。